

デザイン提案を出したあと、経営層から返ってくるこの一言。
「うーん、なんか違うんだよね」
この“なんか”に込められた違和感は、なぜ起きるのでしょうか?
そこには、ビジョン・評価軸・言語感覚のズレがあります。
本稿ではその正体を解き明かし、経営とデザインの“翻訳”方法を探っていきます。
経営陣は、“3年後の会社”や“事業の方向性”を見据えて判断しています。
一方、デザイン現場では目の前の制作物や納期を優先して動く傾向があります。
この“時間軸のズレ”が、しばしばビジュアルにも現れます。たとえば──
デザイナー:「今の顧客に響く、わかりやすい表現」
経営者:「将来のブランド価値を担保する表現」
両者が見る「ゴール」が違えば、当然ながら「正しい判断」も食い違います。
McKinseyの「The Business Value of Design(2018)」では、デザインを経営戦略に組み込んでいる企業は、売上成長率が32%、株主リターンが56%高いと報告されています。
その共通点は「成果につながるデザインの評価指標(KPI)を設計している」こと。
「The Business Value of Design」とは、デザインがビジネスにどのような価値をもたらすかを分析・評価する概念です。
つまり、“なんとなく良さそう”な感覚評価ではなく、「何のためのデザインか?」が明確になっているのです。
一方で、KPIがないまま「感覚評価」に頼ると、経営層は抽象的な違和感しか口にできなくなり、デザイナーは改善の糸口がつかめません。
経営者:「もっとインパクトがほしい」
デザイナー:「どんな種類のインパクトですか?」(内心困惑)
このような曖昧なコミュニケーションもズレの原因です。
言語の解釈やビジュアルの想像力は人によって大きく異なります。
このギャップを埋めるために有効なのが、「可視化された共通言語」です。
提案前に、以下のような共有資料をつくることでズレを減らせます。
ゴール(事業目的・KPI)
ブランドのトーン&マナー
ターゲット(ペルソナ)
「今回は何を重視するか」(機能性?感情?信頼感?)
経営と制作、両者が同じ判断軸で会話できる環境を整えることが重要です。
プロジェクトによっては、アートディレクターやプロジェクトマネージャーが“翻訳者”となることで、意思疎通の精度が飛躍的に向上します。
経営層の“抽象的な要求”を噛み砕いてチームに伝える
デザイナーの意図や狙いを“ビジネス語”にして経営に届ける
この中間レイヤーがあることで、提案の通りやすさ・クオリティが格段に上がります。
「なんか違う」には、理由がある。
そして、そのズレは仕組みで防ぐことができる。
経営とデザインの間にある壁を、個人のセンスや感覚の問題にせず、共有言語・共通評価軸・翻訳体制という“構造”で整備することが、経営に効くデザインの第一歩です。